コミック版「罪と罰〜地球の継承者〜」第九話(最終回)


『人類の未来を決める最終決戦が始まる!!』


(あらすじ…人類の意志・存在を無視し、自らが望む世界を創らんとするアチ。彼女の理想を知ったサキは、人類の未来のため彼女に戦いを挑むが、隠していた力の全てを解放したアチに歯が立たない。敵同士であるものの、アチを倒すという目的のため共同作戦を持ちかけたブラッドの提案を受けたサキ。人類の命運を決する戦いの越勢は果たして!?)


月も曇もない東京の夜空に、一人の少女が浮かんでいる。
「イシか。ヤハリショウキョしなケレバナラないようダ。」
不気味な兜をまとったアチはもはや人間を卓越していた。
「コゾウ、さっきの通りだ。」
「……わかってる。」
作戦は決まったものの、ブラッドとサキに緊張の糸が張りつめていた。
「サキ!!」
ビルの上から声がした。
「サキ…。」
アイランが心配そうに見つめていた。が、サキは即座に笑顔を見せ顔を縦に振った。
「いくぞ!!」
ブラッドの声と同時にサキは共に地面を蹴り、宙を舞いながら力を溜め始めた。
「フフ…ナニかタクラんだわね。」
アチは何もかもお見通しのように言った。
「全開パワー!!」
サキは自身が覚醒した力をアチに向かって手を振りかざす。
数々の閃光がアチに向かって集中している。しかし、アチにバリアが張られ電撃攻撃の効果は皆無だった。
「しかシ…オなジコと…」
アチも集中し怪光線を発しようとし、兜の目が大きく開く。
「シね。」
その時、黒い炎がアチに回りつく。
「!?」
アチは驚いたが黒い炎を蝋燭の火のように接した。
「ブラッドね。コンナコトをスルノワ。」
満身創痍に近いブラッドの左腕には黒い炎が残っていた。
「フフ…ムリよ。」
ブラッドは笑みを浮かべながら右腕を上げた。
右腕を被っていた拘束具が崩れ落ち、その中から奇怪な模様が浮かんだ腕が出てきた。
「キサマは滅びるのだ!!」
攻撃を仕掛けるように右腕を大きく振り上げると、胸に激痛が走った。
「くっ」
アチに受けた傷の痛みにうずき、ブラッドは一瞬攻撃を止めた。
アチは口の端を上げ、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「オマエたちはナンドも、ナンドも…ナンドも、オナじアヤまちをクリかえす。」
ブラッドの胸から血があふれ出ている。
「ナンドも、ナンドも。」
サキは攻撃の手を休めなかった。
「サキも。」
ブラッドは意を決し右腕に再び力を溜める。
「オマエも。」
「封(FUU)!!」
ブラッドは攻撃を繰り出した。無駄な行為を続ける二人を見据えながらアチは淡々と話した。
「マぬケだヨ。」
アチはそうつぶやいた。
「これをただの攻撃だとおもうか?」
ブラッドの声と同時に黒い炎と共に白い炎もアチに回りつく。
「縛(BAKU)!!」
ブラッドは続けざまに攻撃を仕掛ける。流石にアチも驚き、抵抗する間もなかった。
白い炎は黒い炎と融合すると鎖に変化し、アチの動きを封じたのだ。
「ガンソード!全開!!」
サキは自身の力でガンソードをパワーアップさせていた。
ガンソードと全身に電撃をまとったサキはアチに急接近する。
その傍ら、巨大な鎖はブラッドの両腕から繰り出されていた。
「アチ!キサマの誤算だ。これは攻撃ではない!捕縛だ!!」
痛みにこらえながらブラッドはサキに叫ぶ。
「コゾウ!!今だ!!とどめをさせ!!」
「アチィ!!」
渾身の攻撃をアチに仕掛けるサキ。アチの動きを封じたブラッド。指ひとつも動かせる事が出来ないアチ。
勝機が訪れようとした途端、サキは油断してしまった。
「!」
「ワタシをコロシなサイ。」
「ア、アチ!?」
「サキ…コロシなサイ。」
サキが見えたのは以前の人間の姿をした少女のアチだった。
アチが作り出した幻覚に、サキは落ちてしまう。
「ワタシを…コロシナサイ…
コロス…サキ…
サキ…コロス…ワタシを…
サキ、さあ、シナサイ。
コロシ…ワタシ…サキ
サキをコロシなサイ。」
サキは完全にアチの幻覚に陥ってしまった。
「チッ!アチの力にとらわれたか!!」
「サキィ!!」
ブラッドとアイランの激が飛ぶが、サキの耳には届かなかった。
「―サキをコロス?」
二人の幻世界に別の声がした。それをアチが答える。
「ソウヨ…おまエをコロスの。」
「だめだよ」
サキは聞き覚えがあった。
「だめだよ!だめだったら!」
声の張本人を思い出しながらサキは意識を保ち始める。
「パァパア!!」
張りのある子供の声。
「やあ!!」
サキは幻覚を振り払った。
「そうだ!オレ達は」
再びガンソードを握る手に力を込める。
「どんなことが起こっても…!負けられないんだ!!」
サキはアチの兜に狙いを定めてガンソードを振り上げる。
―ピシッ
手ごたえを感じたその時、アチの兜に亀裂が走る。
「―アチっ!!」
兜が崩れ、走馬灯のように人間のアチが現れた。
柔らかい笑みを浮かべる少女のアチ。懸命に祈りを捧げるアチ。救済グループ・リーダーとして駆け回るアチ。
「―アチ…さよなら…。」
仲間、そして友人だった…サキとアイランは涙を浮かべて、崩れ落ちるアチを見守った。
その風景を見たのはブラッドもその一人だった。
アチはわずかな光と共に闇に消えた。
東京・新宿駅の騒動はアチと共に消え、静まり返った。サキは空を佇むしかなかった。
「終わったようだな。」
最初に声を発したのはブラッドだった。しかし、サキは涙を流し続け、ブラッドの問いに反応しなかった。
「……」
サキのショックをブラッドは分かっていた。
「フン。」
声をかけても反応しないサキにブラッドは諦めた。
「レダ!!帰還だ!!」
「ハーイ!!」
ブラッドよりも一回り大きい獣が飛んできた。元の姿に戻ったレダだ。
「はぁ〜〜い、おまちです。ブラッドサマぁ〜!」
レダの存在を確認するとブラッドは、レダの元に向かう。
「コゾウ、忘れるなよ。」
ブラッドは背を向けていたが、最後にサキに顔を振り向き眼光鋭い目と共に言った。
「「まだ戦いは終っていない」ということをな!!」
レダはブラッドが背に乗ると空を切って飛行する。
「そうだ、そうだ。忘れんなよ〜サキ〜〜。バイバイプー。」
レダはいたずらっぽく言ったが、サキは何も答えられなかった。
「……」
夜の東京は不気味な風景だ。その夜の空にブラッドとレダは消えていった。
太平洋上にある武装ボランティアの空母へ戻ったのだ。
サキは涙を拭う力も無い程の放心状態だった。
「サキィ!」
その声だけにサキは反応し、振り向いた。今すぐにでも聞きたい声の張本人がビルの屋上に立っていた。
「アイラン!」
最初は表情が沈んだアイランだったが、すぐに微笑んだ。
その顔を確認したサキに笑顔が広がり、アイランの元に向かう。
「―サキ−」
サキとアイランは嬉々と抱きしめ合った。
「―アイラン−、
―ブラッド−。」
その二人の影に不気味な光が浮かんだ。先ほどからの声の主だ。
「―やはりオマえタチデワ−」
サキたちは気付かなかったが、その光は二人から離れていく。
「―ワタシを−ホロボスことはデキナイノダ−。」
元はアチの姿だった、その光は表情も分からない顔のままそう言い残して消えた。
「あ。」
サキは朝日の光だけに気付いた。
「朝だ!」
「きれい…。」
サキとアイランは東京の明日を照らす光を見つめていた。
「あいつも見てるかな…。」
サキを危機から救ってくれた子供の声の事を思い出した。
「だれ?あいつって?」
「だからオレ達の未来の…」
サキは少々恥ずかしげに言葉が詰まったが、アイランはすぐに分かった。
「あ、子供?」
「へへへ。」
「そういや、あいつの名前なんだっけ?」
東京の不気味さを消し去る朝日の顔が出てきた。
「イサだよ。」
救済グループは無くなってしまったが、サキとアイランの未来を祝福するかのように朝日に照らされる二人が東京にいた。

−完−



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